ある建物の省エネシステムを開発し、全国展開をしてるお客様からのご依頼で、PLCシステムからRaspberry Piへの移行を検討することになりました。当初、お客様はRaspberry Pi用の拡張基板の開発を希望されていましたが、詳細なヒアリングを進める中で、長期安定稼働が必須であることが判明しました。

・最初に提案した構想図

・RaspberryPI
Raspberry Piは開発コストが低く、柔軟な拡張性を持つ魅力的なデバイスですが、マイクロSDカードの耐久性や、頻繁なモデルチェンジによる長期的な部品供給の安定性という点で懸念がありました。そこで、お客様にRaspberry Piの特性と、長期稼働に向けた課題について丁寧に説明し、マイコンを用いたカスタム基板の開発を提案しました。ちょうど世界的な半導体の供給不安があった時期で、Raspberry Piも次はいつ入手できるかわからない状態だったこともあり、マイコン基板で開発する決断となりました。
マイコン基板は、プログラムを内蔵メモリに書き込むため、SDカードのような物理的な故障のリスクが低く、長期安定稼働に適しています。また、Raspberry Piの大きな特徴の一つであるLAN機能については、LANモジュールを搭載することで実現し、TCP/IP通信に対応させました。
さらに、Raspberry Piを上下逆に取り付け、開発基板と二段重ねになってしまう構造と比較し、マイコン基板は一枚の基板で構成できるため、設計の自由度が高まり、より薄くコンパクトなシステムを実現できました。また、AC100V電源モジュールを基板上に搭載することで、現場での設置が容易になり、電源モジュールなどの追加機器が不要となりました。
これらの提案に基づき、お客様との共同開発を進め、3回の試作を経て製品化に成功しました。半導体の供給不安はマイコンでもありますが、数あるマイコンの中でも入手性が安定しているマイコンを選定。部品入手難により製造できないことを回避できました。
お客様より、「なかなかしっかりしているね」とのお褒めの言葉をいただきました。
省エネ需要の高まりが追い風になり、全国からの引き合いに対応されています。