ある特殊分野の機械装置を製造しているお客様の事例を紹介します。
元々、その装置はPLCを使って自動制御を行っていました。制御性能は要求を満たしていましたが、大きくて高価だという問題がありました。ライバル会社の製品と比較しても見劣りがしていました。お客様は高精度な機械装置の製作は得意でしたが、電気的な部分に関してはあまり詳しくありませんでした。
そこで、お客様は当社のホームページを見てご相談いただきました。私達はその業界について素人でしたが、お客様の技術者とタッグを組んで製品を作り上げました。
以下の手順で開発を進めました:
- 準備:現行製品であるPLCの仕様理解、解析、制御対象の機械装置の理解、制御仕様の確認。
- 仕様:お客様からのインタビュー及び、PLC装置の解析結果を基に仕様を確認。この時、当社は基板のみ供給し、お客様がケースを設計するという分担になりました。
- 回路設計、基板設計:お客様は一度製品を発表すると、廃番やモデルチェンジをしないとのこと。長期間の供給に問題がない部品を選定しました。将来の機能アップのために拡張の余地を残し、使用環境を考慮したパターン設計を行いました。
- ケーブル設計:基板とお客様装置との接続ケーブルも設計、製造しました(ハーネスメーカーに依頼)。
- ファームウェア開発:複数の処理を並行して処理するためマルチタスクOSを採用。合計11タスクが動くプログラムとなりました。
- Windowsアプリ開発:Visual Studioにて設定・調整用のアプリを開発しました。
- 動作確認・テスト:当社とお客様で共同テストを繰り返しました。
- リリース:初版をリリース。開発期間は6カ月。
その後:
今回の製品はお客様の装置に組み込む製品でした。お客様の装置は多様であり、社内テストで漏れた不具合が納品先からのクレームとして寄せられました。リリース直後はお客様と共に納品先に出向き、不具合原因を究明し、ファームウェア、回路、基板の改良を重ねました。リリースから10年間で基板の改版を4回行い、最初は頻繁でしたが、徐々に安定しました。途中で通信機能や制御対象の拡張も行いました。

当社で開発した基板の例 (本文で開発した基板とは違います。同様にPLCの置き換えのために開発した基板の一例です。)
以下に、現行装置と当社が開発した基板を使用した装置の比較を示します。容積は1/11と非常にコンパクトになりました。
PLC入り装置 | 当社開発基板入り装置 | |
寸法 mm | 215x130x302 | 31.6x142x172 (1/11サイズ) |
原価 | 250,000円 (カタログ定価による推定) | 50,000円 |
配線 | 内部配線多数 | 配線無し |
システム | 操作パネル付き | PCとUSBで接続して設定 |
装置開発による効果:
PLC使用時はお客様が社内で内製していましたが、高い仕入れ費用や内部配線の多さ、長い納期が課題でした。基板化により、当社から基板を供給し、基板をケースに入れるだけで製品となるため、在庫を確保しつつ、安価で短い納期に対応できるようになりました。これにより、お客様の機械装置に付加価値が付き、トータルコストが低下し、まとまった数量の受注が可能となりました。